筋トレ

瞬発力やパワーを向上させる最新のトレーニング方法『VBT』とは?

アスリートや運動選手の方で「瞬発力・パワーを向上させたい」と考えている人は非常に多いのではないかと思います。

持久系競技者を除く、ほとんどの運動選手がそう考えていると言っても過言ではないかもしれませんね。

多くの運動選手が向上させたいと考えているであろう、瞬発力・パワーですが、タイトルに挙げている『VBT』という新たなトレーニングが、これらの能力を向上させる方法としてここ2年ぐらいで急速に広がってきており、オーストラリアラグビーのナショナルチームやマンチェスターユナイテッドなどのサッカーチーム、アスレチックスなどのMLBのチームのほか、NBAやNFLのチームなどあらゆるメジャースポーツの間でも積極的に採用されるようになってきています。

今回の記事では、このVBTというトレーニング方法を紹介してみたいと思います!

最新の瞬発力向上トレーニング『VBT』とは?

VBTとは【Velocity Based Training】の頭文字をとった言葉になります。

Velocity=速さ、Based=基準という意味なので「速さを基準とするトレーニング」という意味ですね。

後ほど動画を交えて紹介しますが、腕に巻きつけるバンド型の機器を用いて、ウェイトトレーニング中の全力挙上の速度を計測し、その速度をもとにウェイトトレーニングの強度を決定していくというものです。

これまでのウェイトトレーニングでは、筋力を向上させる場合は1~4RMの重量で、筋肥大が1番の目的の場合は8~12RMの重量で、といったように「重さを基準にして」プログラムを組んでいくのが従来のやり方でした。

パワーとは【力×速度】で計算されるので、『力=バーベルorダンベル質量の挙上重量』を上げていくことは、パワーの向上に繋げていくという点で考えてももちろん間違いではありませんが、ただこれだけではバーベルやダンベルを「どのぐらいの速度で挙げているのかどうか」ということを知ることはできませんよね。

例えば150kgでスクワットを行うことができるとしても、挙上速度が遅い…そこで110kgに重量を落としたら150kgでスクワットを行っている時の1.5倍の挙上速度で実施することができた、というのであれば、発揮できているパワーで考えれば110kgでスクワットを行っている時の方が大きい、ということになります。

こういったウェイトトレーニング時の挙上速度を計測することは、実験や研究などでは20年ほど前から行われていたものですが、大がかりでコストのかかる機器がなければ実施することが不可能であったため、ウェイトトレーニングを行う現場では実際に活用することは出来ませんでした。

しかし近年ではテクノロジーの発達により、腕にバンド型の機器を装着し、スマホから専用のアプリをダウンロードするだけで、誰でもウェイトトレーニング時の1回1回の挙上速度を測ることができるようになったことから、この全力挙上の速度を基に強度を決定していくVBTトレーニングは急速に広まっていったようです。

 

VBTトレーニングの行い方

VBTトレーニングは、専用の腕に巻きつけるバンド型の『PUSH』という3加速度計、ジャイロスコープを搭載している機器を使ってトレーニング中の挙上速度を測定することができます。

出典:S&Cplanning

挙上速度は、iPhoneやiPadなどios対応の端末に、VBT専用のアプリをインストールし、Bluetoothにて『PUSH』と端末を連動させることで、端末の画面にて確認することができます。

専用アプリ内ではスクワットデッドリフトベンチプレスなどのフリーウェイトトレーニングから、自体重エクササイズ、メディシンボール、ケトルベル、ジャンプ系など250種目以上登録された種目の中から、これから自分が行うエクササイズを選択し、その挙上速度を測っていきます。

文面だけではいまいちイメージがしづらいかと思うので、実際にPUSHを使用してVBTトレーニングを行っている動画を見てみましょう。

下の動画は、バーベルスクワットを20kg,40kg,60kg,80kg,90kgの重量で数回ずつ行い、その挙上速度から1RM(1回で挙げられるMAXの重量)を算出するというPUSHアプリ内の【TESTS】という計測を行っています。

本来であれば、1RMの測定というのは潰れるリスクを考えると一人で行うのは危険ということと、自分の中で挙上できる最大の重量を扱うということで、怪我のリスクなども高くなってしまうというデメリットも抱えているのですが、PUSH機器を使ったVBTトレーニングでは、それより少ない安全な重量でもそれぞれのセットの1回1回の平均速度から1RMを想定して、自動的に連動アプリの方で算出してくれるという機能もあります。

 

実際にPUSH機器を使って、スクワットの挙上速度計測している動画

動画では、右腕に前述したバンド型の機器、PUSHを巻き1回1回の挙上速度が反映されているということがわかるかと思います。

動画の一番最後でも説明書きがありますが、全力で挙上して平均速度が、

 

・1.0m/s以上の速度が出る場合は3レップ

・1.0m/s未満で0.6m/s以上の速度が出せるウエイトなら2レップ

・それ以下の速度(0.6m/s未満)は1レップ

(※1.0m/sとは「メートル毎秒」と読み、例えば0.5m/sであれば1秒に50cm進む速度ということ)

 

をルールに重量を変え、違う重量で数セット行ったその平均速度を計測して、連動アプリ側で1RMを算出してくれるようですね。

もちろんVBTトレーニングは、1RMを計測するというのがメインの使い方ではなく、これはあくまでPUSHの連動アプリ内に搭載されている中の一つのメニューということになります。

この1RMをアプリ内の【TESTS】という機能で算出した後は、『目的』に合わせて重量や負荷を設定していきます。

目的は、

 

■ スピード

■ スピードパワー

■ 筋力パワー

(※同じパワーという括りの中でもスピードに比重を置いたパワーと筋力に比重を置いたパワーに分かれている)

■ 筋肥大

■ 最大筋力

■ 筋持久力

 

の中の内、どれを高めたいかで1RMの何%の重量で行うかを決定し、それを全力挙上して目的別の指定された挙上速度の範囲内より早ければ負荷が軽いということでウェイトの重量を上げ、指定された挙上速度がキープできなくなった場合は、ウェイトの重量を下げてスピードを維持しながら継続、あるいはトレーニングを終了する、といったような行い方になっているようですね。

多くの種目はリアルタイムフィードバックという機能に対応していて、1回ごとの速度をモニタリングできる上に、スピードが下がってきたらアラームで通知してくれるという機能にも対応しているようなので、もちろん一人で行うことも可能です。

具体的なセットの組み方などは、S&Cスポーツ科学計測テクノロジーというサイトに記載されているメールアドレスにて、トレーニングガイドブックの発行を希望すれば無料でPDFファイルを送ってもらうことができます。

機能も高度かつ充実していますし、様々なメジャースポーツで取り入れられ始めてきている最新のトレーニング方法ということで、非常に私的にも興味がそそられるトレーニングですが、一つネックなのはPUSH機器の値段が少し高いということでしょうか^^;

先ほどのS&Cスポーツ科学計測テクノロジーというサイトの下記ページで購入することができますが、充電用USBケーブルなどがついて¥53,000円にて購入することができます。

ただこれまで研究施設や専門的なごく限られた一部のトレーニング施設などでしか出来なかったことが、非常に手軽に出来るようになったというのは、かなりすごいことだと個人的には思います。

エビデンスなども充実してくれば、これからは従来のように挙上重量だけでなく、挙上スピードも当たり前のようにトレーニングのプログラムを組む上で考えられるようになる時代がやってくるかもしれませんね!

それではフィットネスジャンキーでした!