筋トレ

アンチパラドックス呼吸と風船を使ったトレーニング方法

こんにちは!フィットネスジャンキーです!

今回の記事は前回の記事『呼吸、横隔膜が姿勢や体幹、アスリートのパフォーマンスにも影響するワケとは?』の続きですね。

前回は、私たちが日常絶えずおこなっている「呼吸」の良し悪しが姿勢や体幹の安定性にも大きく関連しているということを述べました。

一見私たちが普通に正しく行えているように見受けられる呼吸ですが、「息をしっかり吸えない」、または「息を吐き切れない」ことで呼吸が浅くなってしまっている人は多く、逆にそこを改善することが姿勢の改善や体幹の安定性向上にも繋がってくるということですね。

まず正しい呼吸とは一体どのような状態を指すのでしょうか?

下の動画をご覧になってみて下さい。

正しい呼吸時の肋骨と横隔膜の動き

この動画のように、正常化されている正しい呼吸では、肺に空気が入る&横隔膜が収縮して下の方に落ちていくことで肋骨全体が動きます。息を吸った時に胸が膨らんでくるんですね。

そして動画では表現されていませんが、お腹周りは息を吸った時に横隔膜が下の方に落ちていくに伴い、横隔膜の下に敷き詰められている臓器たちが押されて様々な方向に動くことでお腹も膨らんでいきます。

そして息を吐いた時には横隔膜が弛緩して上にあがる(元の位置に戻る)のに伴い、肺からも酸素が出ていき胸もお腹も同時に元に戻っていきます。

つまり息を吸った時にちゃんと胸とお腹の両方が膨らんでいき、息を吐いた時に両方が元に戻っていくというのが正しい呼吸になります。

しかし息をしっかり吸えない、または吐けない人というのは、動画をみると一見普通のことの様にも思えるこの呼吸ができていないということになります。

まずは自分が、息をしっかり吸えて吐けているかどうかというのを確かめてみましょう。

 

自分の呼吸が浅くなっていないかを確認する

仰向けに寝て、両膝を立てた状態で一つの手は胸の真ん中辺りに、もう一つの手はおへその辺りに手を置きます。(出来れば上裸の方が目視でも確認しやすいのでそちらの方がよいです)

肩や首の力を抜いて先入観を持たずに、普通に深呼吸を何回か繰り返して自分で目線を下にやり、胸とお腹の動きをよく観察してみましょう。

その時に息を吸う時に胸とお腹がしっかり膨らみ、吐く時に両方元に戻るという正常な動きは出来ていたでしょうか?

息を吸った時に逆にお腹が凹んだり、または息を吸った時にお腹だけがふくらんで胸はふくらまず、吐いた時にも胸は動かなかったということはなかったでしょうか??

お腹が凹んでしまう場合というのは、本来であれば息を吸った時に収縮して下に落ちていくはずの横隔膜がしっかり下に落ちていかないということ、つまり息をしっかり吸えていないということ。

息を吸った時にお腹だけがふくらんで胸はふくらまず、吐いた時にも胸は動かなかった場合というのは、もともと横隔膜が日常的に常に緊張(収縮)状態にあるため、横隔膜が付着している肋骨にも力がかかることで肋骨の位置も変わってしまっていて、継続的に胸(胸郭)上がりきってしまっている状態になっていることを指します。

肋骨が上がりきって固定されてしまっているから、息を吸おうが吐こうが胸に動きがみられないということですね。横隔膜が常に緊張状態にあるということは、完全に弛緩することが出来ないという状態を指すので、この場合は息をしっかり吐き切れないということを意味しています。

これらのように呼吸が正常化されていない状態というのは『パラドックス呼吸』と言われています。“パラドックス”というのは矛盾という意味、つまり呼吸が矛盾しているということですね。

何かの特別な症状のようにも感じてしまうかもしれませんが、大人の方ではむしろ正常に呼吸できている人は少なくて、それは様々なジャンルのアスリートの方でも例外ではないようです。

だからこそ、呼吸に大きくフォーカスを当てたトレーニング方法がスポーツ医学やアスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングの分野でも注目を集めてきているということですね。

 

パラドックス呼吸を改善するエクササイズとは?

パラドックス呼吸を改善するエクササイズ、呼吸に大きくフォーカスを当てたトレーニング方法の最初の導入部分として、『アンチパラドックス呼吸』と呼ばれるエクササイズと、『風船』を使ったトレーニングがあります。

アンチパラドックス呼吸というのは、かたちとしては先ほどの自分が呼吸をしっかり行えているか?で作ったかたちと同じです。

先ほどと同じように、仰向けになって両膝を立てた状態でおへそと胸の真ん中に手を置いた状態を作り、息を吸った時にちゃんと同時に胸とお腹がふくらみ、息を吐いた時に同時に胸とお腹がふくらむようになることを“意識”しながら深呼吸を繰り返していきます。イスに座った状態で行っても大丈夫です。

息を吸う時は常に鼻から吸うようにし、息を吸い切ったら吸った時間の倍かけてゆっくりと息を吐いていきます。

この時、息を吸う際に腰を反らせたり、肩を持ち上げたり顎をあげたりしないように注意しましょう。そして吐く時は力を入れて勢いよく吐くのではなく、あくまで自然に空気が口から抜けていくように吐いていきます。

なかなか胸の動きが感じられないという人ほど、長く息を吐く意識で行ってみて下さい。そうすることで段々と胸が動き、胸に置いている手の感じも変化が感じられてくると思います。

息を吸う~吐くを4~5回ほど繰り返したら、次は手を置く位置を変えます。

次は「肋骨内旋呼吸」というエクササイズも行います。

大胸筋のすぐ下の肋骨に手を置きましょう。左手は左の大胸筋の下の肋骨、右手は右の大胸筋のすぐ下の肋骨です。

先ほどと同じで、鼻から息を吸うのですが、この息を吸う時に手を置いている肋骨が横に広がっていくようになることを意識して行います。息をしっかり吸えて横隔膜が収縮して下にさがっていけば、大胸筋の下辺りの肋骨(6~10番)は吸った時に前に出つつも、横に広がるような動きをする様に出来ています。

そして息を吐く時は、手を置いた肋骨がおへその方に向かって下がっていくことを意識して行いましょう。これも先ほどと同じように、息を吸う~吐くを4~5回ほど繰り返します。

 

そして次は風船を使ったトレーニングを行います。

風船がふくらむほどに深く沢山息を吐くことで、肋骨が下がって横隔膜が弛緩して上にあがる…つまり横隔膜と肋骨が正しい位置(息を吐いた時の)、形になったその状態から息を吸う動作につなげることで、正しく息を吸うパターンを獲得できるというものです。

また、正常化されていない人の普段の呼吸ではなかなか使うことのできなくなっている、『胸横筋』という肋骨を下げることで、息を吐くことを手伝う筋肉を起こして使えるようにすることも目的です。

このように横隔膜、肋骨の動きにアプローチをかけ、息をしっかり吸って吐き切るということを意識的に学習し無意識に出来るようになれれば、首肩周りなどにある副呼吸筋をメインに頼った呼吸をやめることができる=姿勢の改善に繋がってくるということですね。

 

風船を使ったトレーニングの行い方

① 椅子に浅く腰掛け、巻いたタオルか小さいボールを膝に挟みます。背中は軽く丸めた状態にします。

② 左手で風船を持ち咥えます。右手はお腹に置いておきます。

③ 鼻から息を吸い込んで、息を吐き切るまで風船をふくらましていきます。息を吐き切ったら3~5秒ほど静止し、ふたたび鼻から息を吸います。

④ 吸った息をまた吐いて、風船をさらにふくらましていきます。これを4~5回繰り返していきます。

 

◆注意点

・風船は口から離さない。

・息を吸う時は必ず鼻から吸う。

・息を吸う時に風船の口を手や唇で閉めない。だが何もしないと、吸う時に風船に入った空気が一緒に口の中に入り込んできて「ブブブー」となってしまうので、舌を上顎につけることで、風船の口の空気の通り道を塞いでそれを防ぐ。

・息を吸う時に、体がつい伸びあがってしまいがちになるが、そうならずに背中を軽く丸めた状態を常にキープする。肩もすくめないようにする。

・息を吐いていく際、肋骨や胸骨が背中の方に下がっていく感覚を確認する。

 

この風船のトレーニングを行った後に、最初のアンチパラドックス呼吸をもう一度行ってみましょう。胸が最初の時よりも動くようになった、またはお腹の動きが大きくなったなどの変化が感じられれば尚良いですね。

この風船を使ったトレーニングは、『PRIエクササイズ』と呼ばれるトレーニング方法の一部になります。

PRIとはPostural Restoration Institute(日本語に直訳すると姿勢改善研究所)の頭文字をとったもので、理学療法士のロン・ハラスカ氏という人が米国のネブラスカ州に設立した研究教育機関のことです。

先ほど紹介した風船のトレーニングは導入部分的なもので、ここから発展的に様々な動きをつけた状態で風船をふくらましていくことで強度を高めていきます。

 

~まとめ~

今回は2記事に渡って呼吸に関してのことを取り上げてきました。

1記事目は「アスリートのパフォーマンスにも影響を与えるワケとは?」というように、キャッチーで興味を持って頂けそうなタイトルにしましたが笑 呼吸の質が姿勢の良し悪し、体幹の安定性と密接に関連しているということは、アスリートの方だけでなく一般の方にとっても大いに関係があるということはお気づきになって頂けたのではないかと思います。

単純に肉体的な面でもそうですが、呼吸は『自律神経を意識的にコントロールできる唯一の方法』とも言われていて、精神面とも大きく関連しています。

この呼吸と自律神経の関係性の辺りも、また別の機会に述べてみたいと思います!

それではフィットネスジャンキーでした!

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